今日 は、家族 で、川下 りに行 きました
今日 は光輔君 のお父 さんがお休 みの日 でした。だから、久 しぶりに家族 三人 で、出掛 けることになりました 。
○お父 さんは、海 や川 が大好 きなので、今日 は川下 りをしようということになりました 。
○電車 を乗 り継 いで、川下 りが出来 る船 乗 り場 に来 ました 。
○この川 は、流 れが穏 やかで、川 の上流 でゴムボートを借 りて、下流 の終点 でボートを返 すことが出来 るようになっていました 。
○お父 さんが一番 前 に座 り、ボートを漕 ぐ役目 。光輔君 が真 ん中 。お母 さんは一番 後 に座 りました 。
○『さー、出発 するぞー』とお父 さんが声 を掛 けました 。
○光輔君 も、「よーし、出発 進行 !」と声 を張 り上 げました 。
○お母 さんは、二人 の声 を聞 いて、ニコニコと笑 っていました 。
○空 には太陽 が輝 き、水面 の小 さな波 に当 たって満天 の星空 のようにキラキラキラと輝 いていました。川下 りにピッタリの、穏 やかなお天気 でした 。
○お父 さんは、川 がゆっくりゆっくりと流 れているので、オールを持 ってはいましたが、ほとんど漕 ぐ必要 はありませんでした 。
○でも、少 し流 れが淀 んでいるところに来 たので、少 しだけオールで漕 いで、ボートを動 かしました。その拍子 に、水 しぶきが舞 い上 がり、光輔君 達 の顔 にもかかりました 。
○「お父 さん、冷 たいよ」と、光輔君 が言 いました 。
○『ご免 ご免 、掛 かったか?』とお父 さんも笑 って言 いました。『次 に漕 ぐときは、もう少 しゆっくりと漕 ぐよ 』
○光輔君 もお母 さんも、ゆったり、のんびりと、周 りの景色 を眺 めながら、川下 りを楽 しんでいました 。
”水 のしずく”が話 しかける
○ふと、『光輔 ちゃん』という声 が聞 こえました 。
○光輔君 は、「誰 ?」と言 いました 。
○お母 さんが、《どうしたの?》と聞 きました 。
○「今 、僕 を呼 ぶ声 が聞 こえたの。お母 さんは呼 んでないよね ?」
○《呼 んでないわよ》とお母 さんは答 えました 。
○暫 くすると又 、『光輔 ちゃん』という声 が聞 こえました。
○「誰 ? どこにいるの?」と光輔君 が言 うと、『ここだよ。ボートの縁 』と声 が聞 こえました 。
○ボートの縁 には誰 もいるはずがありません。このボートに乗 っているのは、光輔君 の家族 三人 だけなのですから 。
○「ボートの縁 って言 っても、誰 もいないよ。誰 なの?」と光輔君 は聞 きました 。
○『ボートの縁 。ホラ、水 のしずくがあるでしょう? さっきお父 さんが漕 いだときの ……』
○光輔君 は、ボートの縁 についている水 のしずくを見 つめながら、「エー、水 のしずくが喋 っているの?」とビックリして叫 びました 。
○『そうだよ。僕 たちも神様 の子供 。だから、思 うことも喋 ることもできるんだよ。でも、僕 たちの声 が聞 こえるのは、この地球 にはほとんどいないんだ 』
○光輔君 は、「お母 さん、水 が喋 っている!」と叫 びました。
○《そうなの、凄 いわね。それで、何 て言 っているの ?》
○「水 も神様 の子供 だから、喋 れるんだ、って 」
○《そうなの…… 》
水 のしずくは蒸発 すると、一生 が終 わってしまう
○『光輔 ちゃん、お願 いがあるんだ』と、水 がまた話 しかけました 。
○『いま僕 に、お日様 が当 たっているでしょう? 僕 はこの水 が蒸発 してしまったら、お空 の世界 に帰 らなくてはいけないんだ。だから、光輔 ちゃんと少 しでも長 く話 をしたいから、太陽 が当 たらないように、日陰 にしてくれると嬉 しいんだけどな 』
○「分 かった」
○光輔君 は、お母 さんが少 し座 る位置 をずらせば良 いんだと気 がついたので、お母 さんに 、
○「お母 さん、少 し右 に寄 って、この水 のしずくにお日様 が当 たらないようにしてくれる?」と、お願 いをしました 。
○《良 いけど、どうして?》とお母 さんは、座 る位置 を少 しずらしながら聞 きました 。
○「この水 のしずくは、太陽 が当 たって蒸発 すると、お空 の上 に帰 って、もう僕 たちとお喋 りできないんだって 」
○《そうなの・・・。水 の寿命 は、蒸発 するときということね》とお母 さんは、自分 で納得 したようにつぶやきました 。
○『有 り難 う』、水 のしずくはお母 さんと光輔君 に向 かってお礼 を言 いました 。
水 のしずくは、この前 はどんな所 に生 まれてきたのか ?
○光輔君 は水 に向 かって、「しずくさん」と声 を掛 けました。「水 は、雨 となってこの地球 に降 りてくるんでしょう? どこにでも降 りることは出来 るの ?」
○『そうはいかないんだよ 。
○人間 は、この人 の子供 になって、あの国 に生 まれようって、自分 で決 めることが出来 るけれど、僕 たちは大自然 の意識 の命 ずるままにこの地球 に降 りてくるんだよ 。
○だから海 に降 りる者 、山 に降 りて川 となって草木 を潤 す者 、泥水 に落 ちてしまって子供達 にもみくちゃにされる者 、地下水 になって何十年 何百年 も帰 ってこない者 、それは様々 なんだ 』
○「みんなは早 く空 へ帰 りたいの? それとも長 く地球 にいたいの ?」
○『それは水 によって様々 だけど、お空 の上 の人 は水 を大事 に扱 ってくれて、感謝 の気持 ちを持 ってくれる人 ばかりだから、お空 の上 が好 きって水 は多 いだろうね 。
○でも人間 と一緒 で、この地球 は勉強 の場 で、様々 な体験 が出来 る場所 だから、色 んな違 う体験 をしたいと、みんないつも思 っているよ 』
○「今回 は、この川 に降 りて、ここでしずくになったけど、その前 はどんなところに降 りてきたの ?」
○『この前 はねー・・・、うん、こことは違 う川 に降 りてきたよ 。
○何日 も何日 もゆったりと川 を流 れ、川 の底 の方 にいったので、もう、このまま海 へ行 って、暫 くはお空 の世界 には帰 らないのかと思 っていたの。
○そうしたら急 に、周 りが騒 がしくなって、友達 なんかと一緒 に丸 い管 を通 って勢 いよく落下 していったんだ 。
○やがてもの凄 い轟音 が聞 こえ、五体 を震 わせる 。
○と、次 の瞬間 、私 の身体 は厚 い鉄板 に当 たったかと思 うと、一回転 して空中 に放 り出 されていた 。
○この時 初 めてことの成 り行 きが分 かったんだ 。
○私 と仲間達 は、水力発電 のタービンを回 す役目 で、ダムという湖 で何日 も滞 まっていたんだ 。
○空中 に飛 び出 した私 の身体 は霧 となって、液体 から気体 となって蒸発 しようとしている 。
○とうとう地上 での生活 にピリオドを打 つときが来 たことを悟 った 。
○僕 たちの、この地上 での生活 は、いつ終 わるか、それは人間 も一緒 だけど、一瞬 にしてその時 が来 ることが多 いんだよね 』
○「僕 たち人間 は、長 くても百年 ぐらいだけど、水 さんは、気 の遠 くなる程 長 い時間 を、地球 で過 ごすこともあるんだね ?」
○『そうだよ。僕 の知 り合 いなんかは、地下水 で地球 の奥 の方 に行 ったまま、何千年 も会 わなかったのに、最近 、温泉 として地表 に上 がってきて、すぐに空 の上 に帰 ってきた水 も居 たよ 。
○それと、海 の深 いところに行 っている友達 なんかは、もう何万年 も会 っていないよ 』
○「何千年 も、何万年 も会 わなくても、忘 れたりはしないの ?」
○『忘 れたりはしないよ 。
○水 の一滴 一滴 には、この地球 に生 まれた記憶 が全 て刻 まれているから、会 った瞬間 に、どこで一緒 だったか、分 かるんだよ 』
○「ふーん 」
○『でもこれは、人間 も一緒 なんだよ。光輔 ちゃんは今 は、お母 さんと過去 にどこで生 まれたかは思 い出 せないかも知 れないけれど、お空 の上 に帰 れば、全部 分 かっちゃうからね 』
○「そうなんだ。お母 さんとも、前 にも一緒 に生 まれたことがあったんだ」と、光輔君 は嬉 しくなりました 。
○『そうだよ』と水 のしずくも嬉 しそうに話 を続 けました。
遠 い遠 いイエス様 の時代 の、大切 な大切 な水 の思 い出
○『こんな話 をしたから思 い出 したんだけど、何千年 も前 に、イスラエルのヨルダン川 に降 りたことがあったんだよ 。
○川 の水 の一滴 として旅 をしていたとき、ふと前 を見 ると、バプテストのヨハネ様 とイエス様 が立 っておられる 。
○私 はお空 での記憶 が蘇 り、懐 かしさに胸 がふさがれ、一時 も早 くお近 くに行 きたいと思 った 。
○その願 いが叶 ってお側 に近 づいたとき、ヨハネ様 が私 を含 め、何滴 かの水 をすくわれた。その水 がイエス様 の頭 をぬらした 。
○イエス様 の洗礼 という儀式 に仲間 と一緒 に私 が選 ばれたことは、私 の生涯 に忘 れ得 ぬ悦 びであり、光栄 であった 。
○水 の一生 ははかないときも多 いが、この時 ほど、生 き甲斐 と希望 と光栄 に満 ちたことはなかったよ 。
○光輔 ちゃん、私 の今回 の寿命 はもうすぐ終 わるけど、そのイエス様 の洗礼 の時 に、光輔 ちゃんも、お母 さんも、お父 さんもみんな一緒 に、そこにいたんだよ 』
○あまりにも驚 くような話 なので、「ふーん・・・」としか光輔君 は言葉 が出 ませんでした 。
○『光輔 ちゃん、今回 の地球 は、凄 く嬉 しかった。
○心 の綺麗 な人 とでないと、私 たちは話 せないから、光輔 ちゃんと出会 えて良 かったし、イエス様 の記憶 も蘇 って、こんな嬉 しいことはありません 。
○そろそろ、お空 の上 に帰 ります 。
○光輔 ちゃん、有 り難 う。お父 さん、お母 さん、有 り難 う』
○こう言 って水 のしずくは、ボートの縁 から蒸発 していきました 。
○暫 くして光輔君 が聞 きました。「お母 さん、バプテストって何 ?」
○お母 さんは、《確 か、キリスト教 の洗礼 のことだったわよね?》と、お父 さんの方 を向 いて聞 きました 。
○『そうだよ。ヨルダン川 で、予言者 と呼 ばれていたヨハネ様 がイエス様 に洗礼 をしたことが有名 で、バプテストのヨハネ様 と呼ばれているんだよ』とお父 さんが答 えました 。
○光輔君 は、「お父 さん、お母 さん、さっきの水 はね、そのヨハネ様 がイエス様 の洗礼 をした時 に、イエス様 の頭 から垂 らした水 だったんだって 。
○そして僕 もお父 さんもお母 さんも、その時 に、その場 に居 たんだって」と言 いました 。
○お父 さんは、『そうか、凄 い体験 をさせて貰 ったね 。
○光輔 が素直 に明 るく育 ってくれたから、水 と心 が通 じたんだね 。
○私 たちも、素直 な心 で、正 しく生 きていかないといけないね』と言 いました 。
○三人 は、深 い悦 びに包 まれていました 。
○そして、ふと気 がつくと、そこはもう、船着 き場 の終点 でした 。
○ボートから上 がって光輔君 は空 に向 かって、「水 のしずくさーん、有 り難 う」と大 きな声 で叫 びました 。
○そこにはさっきの水 のしずくのお友達 が作 っているのでしょうか、七色 の虹 がクッキリと鮮 やかに架 かっていました 。
○お父 さんもお母 さんも、その空 を見上 げて、にっこりと微笑 んでいました 。
ーーおしまい ーー
○お母 さんは、《確 か、キリスト教 の洗礼 のことだったわよね?》と、お父 さんの方 を向 いて聞 きました 。
○『そうだよ。ヨルダン川 で、予言者 と呼 ばれていたヨハネ様 がイエス様 に洗礼 をしたことが有名 で、バプテストのヨハネ様 と呼ばれているんだよ』とお父 さんが答 えました 。
○光輔君 は、「お父 さん、お母 さん、さっきの水 はね、そのヨハネ様 がイエス様 の洗礼 をした時 に、イエス様 の頭 から垂 らした水 だったんだって 。
○そして僕 もお父 さんもお母 さんも、その時 に、その場 に居 たんだって」と言 いました 。
○お父 さんは、『そうか、凄 い体験 をさせて貰 ったね 。
○光輔 が素直 に明 るく育 ってくれたから、水 と心 が通 じたんだね 。
○私 たちも、素直 な心 で、正 しく生 きていかないといけないね』と言 いました 。
○三人 は、深 い悦 びに包 まれていました 。
○そして、ふと気 がつくと、そこはもう、船着 き場 の終点 でした 。
○ボートから上 がって光輔君 は空 に向 かって、「水 のしずくさーん、有 り難 う」と大 きな声 で叫 びました 。
○そこにはさっきの水 のしずくのお友達 が作 っているのでしょうか、七色 の虹 がクッキリと鮮 やかに架 かっていました 。
○お父 さんもお母 さんも、その空 を見上 げて、にっこりと微笑 んでいました 。
ーーおしまい ーー