プロローグ(はじめに)
ゆ昔々 、大昔 のことです。お空 の上 で、神様 が、人間 やたくさんの動物 や植物 を集 めて、仰 いました。
ゆ『地球 がやっと、生 き物 が住 めるようになった。あなた達 はみんな、これから肉体 を持 って、地球 で生活 をするんだよ。
まず人間 は、他 の動物 や植物 、鉱物 を上手 に使 って、そして協力 して貰 いながら、この空 の上 と同 じような天国 を、地上 に作 るんですよ。
ゆ次 に動物 たち。
ゆある者 は人間 の友達 になって、苦 しんだり悩 んだりしている人間 を慰 めて上 げなさい。犬 や猫 、小鳥 たちも、ペットとして頑張 ってきなさい。亀 や小 さな魚 もそうだね。
ゆそしてある動物 は、人間 の食 べ物 になって上 げなさい。食 べられて死 んでしまうのは嫌 だと思 うかもしれないけれど、人間 も食 べないと地上 で生 きていくことが出来 ない。そしておまえ達 は、悦 んで人間 に食 べられることによって、また地上 に生 まれ変 わることが出来 るんだよ。
ゆ牛 や豚 、一部 の鳥 もそうだね。それから魚 も、人間 の食 べ物 になってあげなさい。人間 が美味 しい美味 しいと言 ってくれることが、おまえ達 の悦 びなんだからね 。
ゆそして植物 たち。ある者 は、花 を咲 かせて、人間 のすさんだ心 や悲 しみの心 を癒 して上 げなさい。バラも、チューリップも、桜 も、みんな精一杯 、美 しい花 を咲 かせておいで。
ゆまたある植物 は、一部 の動物 たちと同 じように、人間 の食 べ物 になって上 げなさい。人間 は、動物 と植物 をバランス良 く食 べないと、地上 で健康 に生 きていくことが出来 ないので、みんな協力 して上 げなさい。
ゆキュウリや大根 やニンジン、キャベツ、トマト、それから、ミカンやリンゴ、いちごやスイカなんかもそうだね、人間 の食 べ物 として、立派 に役目 を果 たしてきなさい。人間 が美味 しい、有 り難 うというような野菜 や果物 になって、人間 を悦 ばせてあげなさい。
ゆ動物 や植物 の地球上 での役目 は、人間 が地上 に天国 を作るために協力 すること、人間 の役 に立 つことだからね。
ゆさあ、これから地上 に降 りて、人間 と一緒 になって、素晴 らしい世界 を創 っておいで 』
ゆ神様 の言葉 を聞 いた人間 はもちろんのこと、動物 や植物 たちも、「はーい」と、大 きな声 で返事 をしました。そしてみんな、お空 の上 から、この地上 に降 りてきました。
ゆそして、動物 や植物 たちは、神様 の言 いつけをキチンと守 り、たくさんの人間 の心 を慰 めたり、食 べ物 になったりしました。そして肉体 が死 ぬと、お空 に帰 り、またこの地上 に何度 も何度 も生 まれ変 わって降 りてきました。
ゆでも人間 は、少 し違 いました。神様 から言 われた、地上 に天国 を作 るということをすっかり忘 れてしまい、自分 や自分 の家族 だけのことを考えたり、自分 の仲間 だけの幸 せを考 えるようになってしまいました。多 くの人 は、他 の人 のことなんかどうでもいい、自分 たちさえ良 かったらそれでいいと考 えるようになってしまいました。だから、あちらこちらで喧嘩 や争 いが起 こったり、戦争 などという悲 しい出来事 も起 こるようになりました。
世界 の国々 と日本
ゆ今 、日本 は、お金 や物 に大変 恵 まれた国 になっています。お金 を出 せば、何 でも買 えるようになっています。食 べ物 も、着 る物 も、欲 しい物 は何 でも買 えます 。
ゆでも世界中 には、貧 しい国 も沢山 あります。自分 の国 の中 で戦争 をしているため、日本 のような普通 の生活 が出来 ない国 も沢山 あります。
ゆそんな国 の子供 たちは、一日一回 しかご飯 が食 べられない子供 もいます。一日一回 ご飯 が食 べられたら嬉 しいという子供 もいます。水 だけで一日 を過 ごさねばならない日 もあります。
ゆ水 は、近 くの川 から汲 んでくる家 も沢山 あります。ゴミが浮 いていたり、汚 れた川 の水 でご飯 を炊 いたり、飲 み水 にしています。
ゆだから病気 になる子供 もたくさんいます。でも病院 も薬 もほとんどありません。だから、病気 で死 んでいく子供 もたくさんいます。病気 にならなくても、食 べる物 がなくて、死 んでいく子供 もたくさんいます。
ゆ世界中 にはこんな国 が沢山 あり、そのような国 では、いつもお腹 をすかしている子供 たちがたくさんいます。そのような国 の子供 たちに比 べたら、日本 の子供 たちは、本当 に恵 まれていると言 えます。
焼 きそばが大好 きな光輔 くん
ゆ光輔君 は、小学生 です。元気 いっぱいで、食 べることが大好 きなので、いつもお腹 いっぱい食 べてしまいます。あまり食 べ過 ぎるので、お母 さんが心配 するくらいです。ちょっとポッチャリの体 になっていましたが、優 しいお母 さんとお父 さんの元 で、元気 に育 っていました。
ゆ食 べることが大好 きな光輔君 でしたが、一 つだけ苦手 な物 がありました。それは野菜 のキャベツでした。どうして嫌 いになったのか、光輔君 もお母 さんもあまり良 く覚 えていないのですが、どうしても食 べられないのです。
ゆ光輔君 は焼 きそばが大好 きでした。家 でもお好 み焼 き屋 のお店 でも良 く食 べます。家 ではお母 さんが気 を遣 って、焼 きそばを皿 に盛 るとき、そっとキャベツを避 けて入 れてくれるので、そのままお腹 いっぱい食 べることが出来 ます 。
ゆでも、外 のお店 やお祖母 さんのお家 で食 べるときは、焼 きそばの中 にたくさんのキャベツが入 っています。光輔君 は、小 さなキャベツを一 つずつ、一 つずつ箸 でつまんで、お皿 の端 に並 べていきます。一 つとして口 には入 れないで、全部 残 してしまいます。
ゆある時 、これを見 ていたお祖母 さんが、「野菜 にも心 があるんだよ。命 があるんだから、大事 にしないといけないんだよ」と言 いました。でも光輔君 は、『野菜 に命 なんかないよ!』と全然 相手 にしませんでした。お祖母 さんは悲 しくなりました。
ゆ何日 か経 って、光輔君一家 がまた、お祖母 さんの家 に遊 びにやってきました。光輔君 のお母 さんが、嬉 しそうな顔 をして、「光輔 が、野菜 も生 きているって、こんな詩 を書 いたよ」と、スマホに写 した光輔君 の詩 を見 せてくれました 。
【やさいも
やさいは
おなかのなかでうごい
えいようをだしてくれてい
やさいをたべたら かわいくな
おはだがつるつ
やさいをたべれることを かんしゃしよ
やさいを
いろいろなやさいをたべ
ゆお祖母 さんは、光輔君 が分 かってくれたんだと、嬉 しくなりました。キャベツも食 べてくれるようになるのかなと、思 いました。
キャベツの悲 しみ
ゆそれからまた何日 かが経 ちました。
ゆ今日 は、光輔君一家 と、お祖母 さんとが一緒 に、お好 み焼 き屋 に行 くことになりました。光輔君 は、やはり一番 好 きな焼 きそばを頼 みました。お祖母 さんやお母 さんは、お好 み焼 きを頼 みました。
ゆ暫 くすると、料理 が運 ばれてきました。みんな、美味 しい美味 しいと言 って、お好 み焼 きや焼 きそばを頂 きました。
ゆでも、光輔君 は、やはり、キャベツを選 り分 けて食 べませんでした。お祖母 さんは、「あんなに素晴 らしい詩 が書 けたのに、まだ、キャベツが食 べられないの?」と聞 きました。光輔君 は、「やっぱり、嫌 いなものは嫌 いや!」と言 いました。お祖母 さんは、「キャベツが悲 しんでいるよ」と言 いましたが、結局 、光輔君 はキャベツを残 してしまいました。
ゆその日 の夜 のことです。お好 み焼 き屋 のゴミ箱 から、シクシク泣 く声 が聞 こえてきます。泣 いているのは、キャベツでした。隣 にいた牛肉 が、「キャベツさん、どうしたんだい?」と聞 きました 。
ゆキャベツは、『光輔 ちゃんが、嫌 いと言 って食 べてくれなかった』と言 って泣 いていました 。
ゆ牛肉 は、「それは仕方 がないよ。僕 だって、食 べて貰 えなかったので、キャベツさんと一緒 にゴミ箱 の中 にいるんだよ」と言 いました 。
ゆでもキャベツは、こう言 いました。
ゆ『牛肉 さんは、食 べている人 のお腹 が一杯 になったから、他 のソバなんかと一緒 に残 されたんでしょう? 私 は違 うの。「嫌 い!」って言 われたの。お腹 が一杯 になって残 されたんなら仕方 がないけど、「嫌 い!」って言 われたら、牛肉 さんだったらどう思 う?』
ゆ「そうか・・・、それはちょっと悲 しいね」
ゆ『私 なんか、日本 に生 まれなかったら良 かったのよ。もし、貧 しい国 に生 まれていたら、みんなから悦 んで食 べて貰 えたのに 』
ゆ「そんなことを言 っちゃいけないよ。僕 らは、「あそこに生 まれたい」だとか、「あそこは嫌 だ」とか言 っちゃいけないって、神様 から言 われているだろう ?」
ゆ『それはそうだけど、役 に立 ちたいって思 っても、人間 から嫌 われたら、どうしたらいいの ?
ゆ私 たち、これから燃 やされて空 の上 に帰 るのよ。牛肉 さんは、ほんの少 し残 されただけだから、「ただいま」って帰 って行 けるけど、私 は何 て言 って帰 ったらいいの? 「嫌 いって言 われて役 に立 てなかったの。神様 、ごめんなさい」って帰 るの ?』
ゆ牛肉 は、どうして慰 めて上 げればいいか、言葉 が見 つかりませんでした。
お空 の上 のキャベツ
ゆキャベツはお空 の上 に帰 ってきました。この空 の上 が、人間 も、動物 も、植物 も、みんなの本当 の世界 です。地上 は、学校 のようなもので、みんなが手 を取 り合 って、助 け合 って、仲良 く暮 らすことができるように勉強 するところです 。
ゆでも、神様 から言 われたことを忘 れてしまった人間 は、自分勝手 なことをしたり、人 のことを考 えなかったり、喧嘩 をしたり、戦争 をしたりする人 もいました。だから、なかなかみんな仲良 く暮 らすことができませんでした 。
ゆキャベツは空 の上 でも、自分 の家 に閉 じこもって、シクシク泣 いていました。もう一度 地球 に降 りていこうとはしませんでした。キャベツのおうちは、畑 の中 です 。
ゆ神様 のお遣 いの人 がキャベツの所 に来 ました。
ゆ「キャベツさん、そんなに落 ち込 まないで。もう少 ししたら、また地球 に降 りて、誰 かの食事 として、人間 の役 に立 てるようになるんだよ 」
ゆ『分 かっています。でも、また、嫌 いって言 われたらどうしようと思 うと、地球 に降 りていきたくないんです 』
ゆ「そんなことを言 ってはいけないよ。もし君 たち植物 や動物 が、地球 に降 りていきたくないだとか、人間 に食 べられたくないだとか言 ったら、人間 は、生 きていけなくなるんだからね 。
ゆだから神様 は動物 や植物 に、好 き勝手 なことを思 ったりしないように、人間 の役 に立 つことだけを思 うようにと、創 られたんだからね」
ゆ『それは良 く分かっているんですが、嫌 いって言 われると、悲 しくなってしまうんです 』
ゆ「そうだね 。
ゆしかし人間 は、地上 に生 まれてしまうと、この空 の上 で神様 から言 われたことを全部 、忘 れてしまうんだよ。だから、自分勝手 なことをする人 もたくさんいるんだよね 。
ゆでも、この宇宙 は全 て神様 が創 られたんだよね。
ゆみんなが協力 し合 って、足 りないところは助 け合 い、みんなが仲良 く生 きるようにと、創 られたんだよ。人間 も神様 の子供 だから、きっとその内 に、分 かってくれるようになるよ 」
ゆ『そうですね・・・。分 かりました。また、地上 に降 りて、大 きなキャベツに育 って、人間 のお役 に立 つようにします 』
ゆそう言 ってキャベツは、また地上 に降 りてくることになりました。
ゆそれを見 ておられた神様 はお遣 いの人 に、『光輔君 を空 の上 に呼 んでみましょうか?』と仰 いました。お遣 いの方 は、「それが良 いかもしれませんね? では近々 、呼 ぶことにいたします」と言 いました。神様 はニコニコして首 を縦 に振 られました 。
光輔君 の見 た夢
ゆそれから暫 くして光輔君 は、夢 を見 ました。夢 の中 の光輔君 は、両手 が羽根 になっていて、空 を飛 ぶことができるんです。光輔君 は、両手 の羽根 を羽 ばたかせて、雲 の上 のお空 の世界 にやってきました。そこは何 か、以前 に来 たことがあるような気 がしました 。
ゆ神様 のお遣 いの人 が、「光輔君 、良 く来 たね」と出迎 えてくれました。光輔君 はこの人 をよく知 っているように思 いましたが、誰 だったかを思 い出 すことはできませんでした 。
ゆお遣 いの人 が、「光輔君 、キャベツが嫌 いみたいだね。どうしてなんだろうね?」と聞 きました 。
ゆ光輔君 は、『どうしてか分 からないんですが、食 べられないんです』と答 えました 。
ゆ「そうか、嫌 いなのか・・・」
○『うん・・・でも、焼 きそばや牛肉 は大好 きだから、たくさん食 べているよ 』
○「そうだね。いつもおいしそうに食 べているのをよく知 っているよ 。でも神様 がね、光輔君 のことを心配 して、それでここに呼 んだんだよ 」
○『神様 が心配 して?』
○「そうだよ 。
○神様 は人間 を、何 でも出来 るようにと、神様 そっくりに創 られた。何 でも出来 るから、人間 の中 には、悪 いことをする人 も出 てきてしまった 。
○しかし、動物 や植物 は人間 のように、飛行機 や自動車 のような物 を、作 ることが出来 る力 を与 えられないで、人間 が地球上 に天国 を作 り上 げるために、協力 してあげるように決 められたんだよ 」
○『・・・・・ 』
○「光輔君 は、動物 だけじゃなく、植物 たちにも心 があって、生命 があることを知 っているよね 」
○『うん、植物 にも命 があることを知 っているよ 』
○「動物 や植物 たちは、自分 の命 を差 し出 して、人間 の食 べ物 になってくれていることは分 かるよね 」
○『うん・・・』
○「もし動物 や植物 が、人間 のように、イヤだとか嫌 いだとか言 い出 したら、どうなるだろうね? 」
○『・・・食 べるものがなくなってしまうの? 』
○「そうだね・・・でも神様 がそんなことはお許 しにならないから、食 べる物 が無 くなったりはしないよ 。
○でも、命 を差 し出 してくれる動物 や植物 に対 して、好 き嫌 いを言 って良 いのかな? 」
○『うーん・・・駄目 だと思 います。感謝 して食 べないといけないと思 います 』
○「そうだね。神様 は、それを心配 しておられるんだよ。人間 が生 きるために、大事 な生命 を差 し出 してくれている動物 や植物 に感謝 できなくて、どうして人間 が仲良 く暮 らせるようになるだろうか? どうして地上 に天国 を作 ることが出来 るだろうか、とね 。
○お母 さんが作 ってくださった食事 を、好 き嫌 いをせずに、動物 や植物 にも感謝 して、そして、食物 を買 うために働 いてくださっているお父 さんにも感謝 して、いただくことが大事 だね 」
○『はい、分 かりました。これから好 き嫌 いなんか言 わず、感謝 していただくようにいたします 』