お祖父 さんの命日
今日 は、光輔君 が大好 きだったお祖父 さんの命日 です。命日 とは、お祖父 さんの死 んだ日 、亡 くなった日 ということです 。
光輔君 とお母 さんは、お祖母 さんと一緒 に、お祖父 さんの墓参 りに行 くことになりました。ちょうど土曜日 だったので、うまい具合 に学校 の休 みの日 に当 たっていました 。
天気 の良 い日 で、空 は澄 み渡 っていました。三人 は車 で、山 の頂上 にある共同 の墓地 にやってきました 。
お祖母 さんは花 と線香 を持 って、お母 さんが水 の入 った桶 を持 って、お墓 の前 にやってきました 。
お墓 に水 をかけ、花 を供 え、線香 に火 をつけました 。
墓参 りの時 に唱 える言葉
お祖母 さんが、『お祖父 さんに、「みんな明 るく幸 せに暮 らしています。お祖父 さん、有 り難 うございます」って感謝 することが、お墓参 りで一番 大事 なことなんだって』と言 いました 。
お母 さんが、「ふーん、そうなんだ。お墓 でも仏壇 の前 でも、何 を言 ったら良 いのかよく分 からなかったけど、感謝 の言葉 を伝 えればいいのか」と言 いました 。
『そうよ。お母 さんは、光輔君 が元気 で明 るく、幸 せに生活 をしてくれていることが一番 嬉 しいでしょう?』
「そりゃそうよ 」
『お祖父 さんも一緒 。子供 や孫 が幸 せに暮 らしていて、有 り難 うって感謝 してくれることが一番 嬉 しいのよ』
「そうなんだ 。じゃあ光輔君 、お祖父 ちゃんに、有 り難 うってお参 りをしよう 」
お母 さんはこう言 って、光輔君 やお祖母 さんと一緒 にお参 りをしました。
お墓 の中 に、死 んだ人 は入 っているの ?
お参 りを終 えて墓地 の事務所 に歩 いて帰 ってくる間 に、光輔君 はこんな質問 をお母 さんにしました 。
〔お祖父 ちゃんは、あのお墓 の中 に入 っているの ?〕
お母 さんは、「そうよ。死 んだらみんな、あのようなお墓 の中 に入 るのよ」と返事 をしました 。
これを聞 いていたお祖母 さんが、『それは違 うわよ』と言 いました 。
『お墓 は、肉体 の骨 を捨 てるところ。本当 の人間 、この肉体 を動 かしていた魂 は、お墓 の中 なんかに入 っていたら大変 。あの世 と言 って、目 には見 えないけれど、お空 の上 に魂 だけが住 む光 の世界 があるのよ 』
〔じゃ、お祖父 ちゃんは、お空 の上 に住 んでいるの ?〕
死 なない本当 の生命
『そうよ。お空 の上 から、光輔君 が元気 にしているかな、みんなに優 しくしているかな、勉強 も頑張 っているかなって、いつも見 ているんだよ 』
〔ふーん、じゃあ、お祖父 ちゃんは、生 きているんだ〕
『そうよ。肉体 が無 くなってしまったから、私達 には見 えなくなったけれど、お祖父 ちゃんはちゃんと生 きていて、光輔君 を見守 ってくれているんだよ 』
〔じゃ、お祖母 ちゃんが死 んでも、ずっと生 きているの ?〕
『そうよ 。
・・・光輔君 が今 、思 ったり考 えたりしているその意識 というもの、それを魂 と言 っているんだけど、その意識 は死 んだり無 くなったりはしないんだよ 。 その意識 とか魂 とか言 っているものが、永遠 に死 なない生命 なんだよ 』
〔ふーん、じゃあ、死 んだって言 ってるのは、身体 のことを言 っているの ?〕
『凄 いわね、光輔君 、その通 り。
ゆこの肉体 が死 んだらみんな無 くなるって思 っている人 も多 いんだけど、肉体 は池 や湖 に浮 かぶ舟 のようなもので、魂 はその舟 を漕 いでいる船頭 さんだね。だから、何度 も何度 も新 しい舟 に乗 り換 えて、生 まれてくるんだよ 』
〔でも、死 んじゃったら、お空 の上 で生 きていても、僕 らとお話 は出来 ないんだ 〕
「そうね、お空 の上 のお祖父 ちゃんは、私達 のことが見 えて、考 えていることまで分 かってしまうそうだけど、こちらからは何 も見 えないし聞 こえないからね ー」
〔死 んでもお話 が出来 たらいいのにな ー〕
光輔君 は独 り言 のようにつぶやくのを、お祖母 さんは微笑 みながら『そうねー』と言 って見 ていました 。
天国 と地獄
お墓参 りが終 わって、お昼 になったので、三人 は近 くの中華料理 のお店 で食事 をすることになりました 。
光輔君 は大好 きなラーメンと餃子 を、お祖母 さんとお母 さんは、単品 のメニューをいくつか頼 んで、少 しずつ分 け合 って食 べることにしました 。
お母 さんが、お祖母 さんに聞 きました。
「地獄 ってあるの ?」
光輔君 が返事 をしました。〔先生 が、無 いって言 ってたよ〕と。〔人間 が悪 いことをしないようにするための作 り話 だって 〕
『そうね 』
今度 はお祖母 さんが話 し始 めました。
『死 んだら終 わりって思 っている人 と同 じように、地獄 なんか無 いって思 っている人 も多 いようね 。
ゆでも、人間 は生 き続 けているのだから、良 いことをしたら天国 で、悪 いことをしたら地獄 っていうのは、間違 っているとは思 えないんだけどね 』
光輔君 が心配 そうに聞 きました。〔お祖父 ちゃんは、地獄 じゃないよね ?〕
『お祖父 さんは、神様 はいつも見 ておられると言 って、正 しく正 しく生 きてきたから、ちゃんと天国 に行っていると思 うよ 』
「どんな人 が地獄 に行 くの?」と、今度 はお母 さんが聞 きました 。
『どんな人が行 くんだろうね? お祖父 さんは、【この世 のほとんどの人 が地獄 に行 ってしまう】って言 ってたけど、ね 』
「ほとんどの人 っていうことは、私達 も死 んだら地獄 っていうこと ?」
『さあ、どうだろうね? お祖父 さんが生 きている間 に、よく教 えてもらっとけば良 かったね 』
お祖母 さんのお勉強
この話 を聞 いていた、お空 の上 にいる神様 のお遣 いの人 が神様 に、「今度 はお祖母 さんを、空 の上 に呼 ぶことにします」と、神様 に言 いました。神様 はニコニコされて、首 を縦 に振 られました 。
しばらくしてお祖母 さんは夢 を見 ました。両手 が大 きな羽根 になって、大空 を飛 んでいるのです 。
お祖母 さんは昔 からジェットコースターが怖 くて乗 れませんでした。でも、自分 の手 が羽根 になって大空 を飛 ぶことは少 しも怖 くなく、むしろ気持 ちがいいくらいでした 。
空 の上 、雲 の上 は何 と、新緑 の大地 になっていました。鳥 も花 も、お祖母 さんを迎 えてくれました。大地 のスロープは、無限 と思 えるほど遠 くまで続 いていました 。
神様 のお遣 いの人 が待 っていてくれ、「よく来 られましたね。でも、お祖母 さん、お祖父 さんから余 りよく教 えて貰 わなかったようですね」と言 われました 。
お祖母 さんは、『はい、私 は勉強 が苦手 で、お祖父 さんの言 うことを真剣 に聞 かなかったようです』と言 いました 。
「勉強 するかしないかは、皆 さん一人 ひとりの自由 ですが、この宇宙 は正 しい生 き方 を、神様 がちゃんと決 めておられるのです。その正 しい生 き方 をしないと、本当 の意味 での幸 せになることは出来 ません。
当然 、肉体 が死 んだ後 に、この空 の上 の世界 に戻 ってくることは出来 ないで、俗 に言 われている地獄 に行 ってしまうのです 」
『はい、きちんと勉強 しないで申 し訳 ございませんでした。どのような生 き方 をしなければならないのか、どのような生 き方 をしないと地獄 に行 ってしまうのですか? それを教 えていただけませんでしょうか ?』
お祖母 さんは、神様 のお遣 いの人 に、真剣 に尋 ねました。
神様 のお遣 いの人 は、詳 しく説明 をされ、お祖母 さんもよく分 かったようでした 。
夢 から覚 める
『有 り難 うございました。今日 、教 えていただいたことを決 して忘 れないで、毎日毎 日を神様 の御心 のままに、正 しく生きることを心 がけさせていただきます 』
お祖母 さんはそう言 って、神様 のお遣 いの人 と別 れ、大 きな両手 の羽根 を羽 ばたかせて、自分 のお家 に帰 ってきました 。
自分 の家 の屋根 が見 えたその時 、お祖母 さんの手 の羽根 が消 えてしまいました。『あっ』と言 う間 に屋根 を突 き破 って、いつも自分 が寝 ているベッドの上 に落 ちました 。
そこでお祖母 さんは目 が覚 めました。いつもは寝相 が良 いのに、今日 は何故 か、ベッドから床 に落ちてしまっていました 。
お祖母 さんは、『ああ、夢 だったんだ。これは大切 な夢 だから、決 して忘 れないように、教 えていただいたことをキチンとノートに書 いておこう』と思 い、ベッドから起 きだして机 に向 かい、夢 の中 の出来事 をすべてノートに書 いておきました 。
心 の綺麗 な人 だけが天国 に行 ける
それから何日 かして、光輔君 とお母 さんが、お祖母 さんのお家 にやってきました。お祖母 さんは早速 、『分 かったよ、どうしたら地獄 に行 ってしまうのか、天国 に行 けるのか 』
〔本当 ? お祖父 さんは天国 だった ?〕と、光輔君 が聞 きました 。
『勿論 よ、お祖父 さんは間違 いなく天国 ですって』
「私達 はどうなるの?」、今度 はお母 さんが聞 きました。
『今 のままだったら、きっと地獄 ね、お母 さんも私 も。天国 に行 けるのは、光輔君 だけかもしれないね 』
「光輔 は天国 ?」
『そうよ。だって、心 が汚 れていないもの 』
〔心 が汚 れていると、天国 に行 けないの ?〕
光輔君 が傍 から口 を挟 みました 。
『そうなんだって。あの世 とこの世 は繋 がっていて、この世 の心 のままの世界 に行くそうよ。そして天国 は自動 ドアになっていて、心 が汚 れていて、光 が出 ていない人 は、天国 のドアが開 かないそうよ 』
〔お母 さんも、心 が汚 れているの ?〕
光輔君 が心配 そうに聞 きました 。
「うーん、どうなんだろう? そこそこ綺麗 だと思 うんだけどなあ 」と、お母 さんが心配 そうに答 えました 。
『私達 の常識 で考 えたって駄目 なんだって 。
天国 は神様 の国 でしょう? だから、神様 の心 に叶 ったことを思 い、神様 の心 に叶 ったことをしてきた人 でないと行 けないそうよ。そうすると、天国 に行 ける人 って、本当 に少 ししかいないって思 わない ?』
「それはそうかもしれないけれど、神様 の心 に叶 うことって、それが分 からないんじゃないの ?」
『その通 り。今 の私達 は、神様 の心 が分 からなくなってしまったの 。でも、人間 も、他 の生 き物 も、そして宇宙 もすべて神様 が創 られたものでしょう? それらの全 てが仲良 く調和 して生 きていくことが神様 の願 いでしょう ? そう考 えると今 の世 の中 、私 たちも含 めて神様 の思 いから外 れている人 ばっかりみたいに思 わない ?』
「うーん、どういうふうに外 れているのかなあ ?」
将来 を考 えると、お金 中心 に考 えてしまう
『私 たち人間 は、自分 には絶対 にウソがつけないでしょう? そのウソのつけない心 が神様 と繋 がっているんだって。そのウソのつけない心 に聞 くと、何 が正 しいか正 しくないか、神様 の心 に叶 っているかいないかが、すぐ分 かるそうよ 。
例 えばね、あの人 が意地悪 をしたから、私 も意地悪 をするんだということが正 しいことか? 又 、道 ばたで困 っている人 がいたら手 を貸 してあげることがいいことかどうか、ウソのつけない自分 の心 に聞 いたらすぐに、答 えが出 るでしょう ?
ゆそういう正 しいこと、神様 の思 いに叶 ったことを、勇気 を持 ってやること、これが大切 ということね 』
「そういうことか。ウソのつけない自分 の心に聞 くということか。でも、実際 に地獄 って、どんなふうになっているのかしら 」
『そうね、地獄 に行 く人 は先 ず、神様 を信 じないで、人間 の生 まれ変 わりを信 じない人 や死 んだら終 わりって思 っている人 。そういう人 は、死 んでも死 んでいないと思 っているから、肉体 から離 れようとしないで火葬場 までついて行 くそうよ 。
ゆそれから死 んだらお墓 やお寺 に行 くと思 っている人 。こういう人 は思 った通 り、お墓 やお寺 にずっといるそうよ 。
ゆそういう人 でなくっても、いつも怒 ったり愚痴 を言 ったり、そしり、ねたみ、不満 ばかりを言 っている人 。お金 や肉体 が大事 と、人 のことより自分 のことばっかり考 えている人 。そういう人達 はそういう人達 だけが集 まって、喧嘩 をしたりウソをついたり、あの世 ではお金 なんか使 えっこないのにお金儲 けにかけずり回 ったり、そんなことばかりをしているそうよ 。
ゆこういう人達 は、仲良 く調和 して生 きて欲 しいと思 っておられる神様 の心 から大 きく離 れていることになるわよね 。
ゆこう考 えると、今 の日本人 は、ほとんどの人 が自己中心 で、お金 の亡者 になっているから、みんな地獄 に行 くしか仕方 がないのかもしれないね 』
「そんなこと言 ったって」と、お母 さんが反論 しました。
ゆ「人 を押 しのけてまでとは考 えないけれど、お祖母 さんの時代 は年金 がたくさん入 るけど、私 なんかの時代 は、年金 なんてあまり当 てに出来 ないのよ。だから、当 てにしなくても良 いように、今 から考 えて、貯金 も出来 るだけしないと心配 なのよ 」
『そうね、将来 のことを考 えるのは決 して悪 いことじゃないわ。でも、自分 たちのことだけを考 えてお金 に夢中 になるのじゃなくて、他人様 のことも考 え、仲良 くお金 も分 け合 って生 きていけたら、心 も楽 になると思 うけどね 。
欲望 は尽 きることがないので、〈足 るを知 る〉ということが大切 だって教 えていただいたよ 。
ゆそれに、この世 の中 は、正 しく生 きる人 は、物事 がうまく進 むように出来 ているんだって。これが神様 の創 られた法則 なんだって 』
〔お母 さん〕、光輔君 が口 を挟 みました 。
ゆ〔そんなに心配 しなくてもいいよ。僕 が大きくなったら、ちゃんと働 いて心配 ないようにしてあげるから、のんびり生 きていたらいいよ 。
僕 も空 の上 で、人間 はみんなが助 け合 って、仲良 く生 きることが大事 だって。それを勉強 するために地球 に生 まれたんだって教 えて貰 ったよ〕
参考 :キャベツの悲 しみ
「・・・その通 りね。自分 たちのことだけを考 えてちゃいけないわよね。
お母 さん、駄目 ね、最近 、光輔君 に教 えて貰 ってばっかり。光輔 先生 の生徒 にして貰 おうかな ?」
三人 は顔 を見合 わせて、悦 びいっぱいの笑顔 になっていました 。
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親子 が仲良 く助 け合 って生 きていく姿 ・・・親 は子供 が愛 おしくて仕方 がない、子供 は親孝行 をして親 の悦 ぶ姿 を見 ることが嬉 しくて仕方 がない・・・そんな姿 こそが天国 をそのまま現 しているということでしょう 。
家庭 の中 が天国 でなかったら、他人様 に親切 をしたり、周囲 を明 るい天国 に出来 るはずがありません。もちろん、死 んでから天国 に行 けるはずもありませんね。魂 にとっては、この世 もあの世 もずっと続 いているんですから 。
家 の中 が明 るく笑 いの絶 えないような家庭 、そんな家庭 こそがこの人生 で一番大切 なことで、実現 すべき姿 なのでしょうね 。