お祖父さんの墓(おじいさんのはか)
2019/11/4
お祖父さんの命日
今日は、光輔君が大好きだったお祖父さんの命日です。命日とは、お祖父さんの死んだ日、亡くなった日ということです。
光輔君とお母さんは、お祖母さんと一緒に、お祖父さんの墓参りに行くことになりました。ちょうど土曜日だったので、うまい具合に学校の休みの日に当たっていました。
天気の良い日で、空は澄み渡っていました。三人は車で、山の頂上にある共同の墓地にやってきました。
お祖母さんは花と線香を持って、お母さんが水の入った桶を持って、お墓の前にやってきました。
お墓に水をかけ、花を供え、線香に火をつけました。
墓参りの時に唱える言葉
お祖母さんが、『お祖父さんに、「みんな明るく幸せに暮らしています。お祖父さん、有り難うございます」って感謝することが、お墓参りで一番大事なことなんだって』と言いました。
お母さんが、「ふーん、そうなんだ。お墓でも仏壇の前でも、何を言ったら良いのかよく分からなかったけど、感謝の言葉を伝えればいいのか」と言いました。
『そうよ。お母さんは、光輔君が元気で明るく、幸せに生活をしてくれていることが一番嬉しいでしょう?』
「そりゃそうよ」
『お祖父さんも一緒。子供や孫が幸せに暮らしていて、有り難うって感謝してくれることが一番嬉しいのよ』
「そうなんだ。じゃあ光輔君、お祖父ちゃんに、有り難うってお参りをしよう」
お母さんはこう言って、光輔君やお祖母さんと一緒にお参りをしました。
お墓の中に、死んだ人は入っているの?
お参りを終えて墓地の事務所に歩いて帰ってくる間に、光輔君はこんな質問をお母さんにしました。
〔お祖父ちゃんは、あのお墓の中に入っているの?〕
お母さんは、「そうよ。死んだらみんな、あのようなお墓の中に入るのよ」と返事をしました。
これを聞いていたお祖母さんが、『それは違うわよ』と言いました。
『お墓は、肉体の骨を捨てるところ。本当の人間、この肉体を動かしていた魂は、お墓の中なんかに入っていたら大変。あの世と言って、目には見えないけれど、お空の上に魂だけが住む光の世界があるのよ』
〔じゃ、お祖父ちゃんは、お空の上に住んでいるの?〕
死なない本当の生命
『そうよ。お空の上から、光輔君が元気にしているかな、みんなに優しくしているかな、勉強も頑張っているかなって、いつも見ているんだよ』
〔ふーん、じゃあ、お祖父ちゃんは、生きているんだ〕
『そうよ。肉体が無くなってしまったから、私達には見えなくなったけれど、お祖父ちゃんはちゃんと生きていて、光輔君を見守ってくれているんだよ』
〔じゃ、お祖母ちゃんが死んでも、ずっと生きているの?〕
『そうよ。
・・・光輔君が今、思ったり考えたりしているその意識というもの、それを魂と言っているんだけど、その意識は死んだり無くなったりはしないんだよ。 その意識とか魂とか言っているものが、永遠に死なない生命なんだよ』
〔ふーん、じゃあ、死んだって言ってるのは、身体のことを言っているの?〕
『凄いわね、光輔君、その通り。
ゆこの肉体が死んだらみんな無くなるって思っている人も多いんだけど、肉体は池や湖に浮かぶ舟のようなもので、魂はその舟を漕いでいる船頭さんだね。だから、何度も何度も新しい舟に乗り換えて、生まれてくるんだよ』
〔でも、死んじゃったら、お空の上で生きていても、僕らとお話は出来ないんだ〕
「そうね、お空の上のお祖父ちゃんは、私達のことが見えて、考えていることまで分かってしまうそうだけど、こちらからは何も見えないし聞こえないからねー」
〔死んでもお話が出来たらいいのになー〕
光輔君は独り言のようにつぶやくのを、お祖母さんは微笑みながら『そうねー』と言って見ていました。
天国と地獄
お墓参りが終わって、お昼になったので、三人は近くの中華料理のお店で食事をすることになりました。
光輔君は大好きなラーメンと餃子を、お祖母さんとお母さんは、単品のメニューをいくつか頼んで、少しずつ分け合って食べることにしました。
お母さんが、お祖母さんに聞きました。
「地獄ってあるの?」
光輔君が返事をしました。〔先生が、無いって言ってたよ〕と。〔人間が悪いことをしないようにするための作り話だって〕
『そうね』
今度はお祖母さんが話し始めました。
『死んだら終わりって思っている人と同じように、地獄なんか無いって思っている人も多いようね。
ゆでも、人間は生き続けているのだから、良いことをしたら天国で、悪いことをしたら地獄っていうのは、間違っているとは思えないんだけどね』
光輔君が心配そうに聞きました。〔お祖父ちゃんは、地獄じゃないよね?〕
『お祖父さんは、神様はいつも見ておられると言って、正しく正しく生きてきたから、ちゃんと天国に行っていると思うよ』
「どんな人が地獄に行くの?」と、今度はお母さんが聞きました。
『どんな人が行くんだろうね? お祖父さんは、【この世のほとんどの人が地獄に行ってしまう】って言ってたけど、ね』
「ほとんどの人っていうことは、私達も死んだら地獄っていうこと?」
『さあ、どうだろうね? お祖父さんが生きている間に、よく教えてもらっとけば良かったね』
お祖母さんのお勉強
この話を聞いていた、お空の上にいる神様のお遣いの人が神様に、「今度はお祖母さんを、空の上に呼ぶことにします」と、神様に言いました。神様はニコニコされて、首を縦に振られました。
しばらくしてお祖母さんは夢を見ました。両手が大きな羽根になって、大空を飛んでいるのです。
お祖母さんは昔からジェットコースターが怖くて乗れませんでした。でも、自分の手が羽根になって大空を飛ぶことは少しも怖くなく、むしろ気持ちがいいくらいでした。
空の上、雲の上は何と、新緑の大地になっていました。鳥も花も、お祖母さんを迎えてくれました。大地のスロープは、無限と思えるほど遠くまで続いていました。
神様のお遣いの人が待っていてくれ、「よく来られましたね。でも、お祖母さん、お祖父さんから余りよく教えて貰わなかったようですね」と言われました。
お祖母さんは、『はい、私は勉強が苦手で、お祖父さんの言うことを真剣に聞かなかったようです』と言いました。
「勉強するかしないかは、皆さん一人ひとりの自由ですが、この宇宙は正しい生き方を、神様がちゃんと決めておられるのです。その正しい生き方をしないと、本当の意味での幸せになることは出来ません。
当然、肉体が死んだ後に、この空の上の世界に戻ってくることは出来ないで、俗に言われている地獄に行ってしまうのです」
『はい、きちんと勉強しないで申し訳ございませんでした。どのような生き方をしなければならないのか、どのような生き方をしないと地獄に行ってしまうのですか? それを教えていただけませんでしょうか?』
お祖母さんは、神様のお遣いの人に、真剣に尋ねました。
神様のお遣いの人は、詳しく説明をされ、お祖母さんもよく分かったようでした。
夢から覚める
『有り難うございました。今日、教えていただいたことを決して忘れないで、毎日毎日を神様の御心のままに、正しく生きることを心がけさせていただきます』
お祖母さんはそう言って、神様のお遣いの人と別れ、大きな両手の羽根を羽ばたかせて、自分のお家に帰ってきました。
自分の家の屋根が見えたその時、お祖母さんの手の羽根が消えてしまいました。『あっ』と言う間に屋根を突き破って、いつも自分が寝ているベッドの上に落ちました。
そこでお祖母さんは目が覚めました。いつもは寝相が良いのに、今日は何故か、ベッドから床に落ちてしまっていました。
お祖母さんは、『ああ、夢だったんだ。これは大切な夢だから、決して忘れないように、教えていただいたことをキチンとノートに書いておこう』と思い、ベッドから起きだして机に向かい、夢の中の出来事をすべてノートに書いておきました。
心の綺麗な人だけが天国に行ける
それから何日かして、光輔君とお母さんが、お祖母さんのお家にやってきました。お祖母さんは早速、『分かったよ、どうしたら地獄に行ってしまうのか、天国に行けるのか』
〔本当? お祖父さんは天国だった?〕と、光輔君が聞きました。
『勿論よ、お祖父さんは間違いなく天国ですって』
「私達はどうなるの?」、今度はお母さんが聞きました。
『今のままだったら、きっと地獄ね、お母さんも私も。天国に行けるのは、光輔君だけかもしれないね』
「光輔は天国?」
『そうよ。だって、心が汚れていないもの』
〔心が汚れていると、天国に行けないの?〕
光輔君が傍から口を挟みました。
『そうなんだって。あの世とこの世は繋がっていて、この世の心のままの世界に行くそうよ。そして天国は自動ドアになっていて、心が汚れていて、光が出ていない人は、天国のドアが開かないそうよ』
〔お母さんも、心が汚れているの?〕
光輔君が心配そうに聞きました。
「うーん、どうなんだろう? そこそこ綺麗だと思うんだけどなあ」と、お母さんが心配そうに答えました。
『私達の常識で考えたって駄目なんだって。
天国は神様の国でしょう? だから、神様の心に叶ったことを思い、神様の心に叶ったことをしてきた人でないと行けないそうよ。そうすると、天国に行ける人って、本当に少ししかいないって思わない?』
「それはそうかもしれないけれど、神様の心に叶うことって、それが分からないんじゃないの?」
『その通り。今の私達は、神様の心が分からなくなってしまったの。でも、人間も、他の生き物も、そして宇宙もすべて神様が創られたものでしょう? それらの全てが仲良く調和して生きていくことが神様の願いでしょう? そう考えると今の世の中、私たちも含めて神様の思いから外れている人ばっかりみたいに思わない?』
「うーん、どういうふうに外れているのかなあ?」
将来を考えると、お金中心に考えてしまう
『私たち人間は、自分には絶対にウソがつけないでしょう? そのウソのつけない心が神様と繋がっているんだって。そのウソのつけない心に聞くと、何が正しいか正しくないか、神様の心に叶っているかいないかが、すぐ分かるそうよ。
例えばね、あの人が意地悪をしたから、私も意地悪をするんだということが正しいことか? 又、道ばたで困っている人がいたら手を貸してあげることがいいことかどうか、ウソのつけない自分の心に聞いたらすぐに、答えが出るでしょう?
ゆそういう正しいこと、神様の思いに叶ったことを、勇気を持ってやること、これが大切ということね』
「そういうことか。ウソのつけない自分の心に聞くということか。でも、実際に地獄って、どんなふうになっているのかしら」
『そうね、地獄に行く人は先ず、神様を信じないで、人間の生まれ変わりを信じない人や死んだら終わりって思っている人。そういう人は、死んでも死んでいないと思っているから、肉体から離れようとしないで火葬場までついて行くそうよ。
ゆそれから死んだらお墓やお寺に行くと思っている人。こういう人は思った通り、お墓やお寺にずっといるそうよ。
ゆそういう人でなくっても、いつも怒ったり愚痴を言ったり、そしり、ねたみ、不満ばかりを言っている人。お金や肉体が大事と、人のことより自分のことばっかり考えている人。そういう人達はそういう人達だけが集まって、喧嘩をしたりウソをついたり、あの世ではお金なんか使えっこないのにお金儲けにかけずり回ったり、そんなことばかりをしているそうよ。
ゆこういう人達は、仲良く調和して生きて欲しいと思っておられる神様の心から大きく離れていることになるわよね。
ゆこう考えると、今の日本人は、ほとんどの人が自己中心で、お金の亡者になっているから、みんな地獄に行くしか仕方がないのかもしれないね』
「そんなこと言ったって」と、お母さんが反論しました。
ゆ「人を押しのけてまでとは考えないけれど、お祖母さんの時代は年金がたくさん入るけど、私なんかの時代は、年金なんてあまり当てに出来ないのよ。だから、当てにしなくても良いように、今から考えて、貯金も出来るだけしないと心配なのよ」
『そうね、将来のことを考えるのは決して悪いことじゃないわ。でも、自分たちのことだけを考えてお金に夢中になるのじゃなくて、他人様のことも考え、仲良くお金も分け合って生きていけたら、心も楽になると思うけどね。
欲望は尽きることがないので、〈足るを知る〉ということが大切だって教えていただいたよ。
ゆそれに、この世の中は、正しく生きる人は、物事がうまく進むように出来ているんだって。これが神様の創られた法則なんだって』
〔お母さん〕、光輔君が口を挟みました。
ゆ〔そんなに心配しなくてもいいよ。僕が大きくなったら、ちゃんと働いて心配ないようにしてあげるから、のんびり生きていたらいいよ。
僕も空の上で、人間はみんなが助け合って、仲良く生きることが大事だって。それを勉強するために地球に生まれたんだって教えて貰ったよ〕
参考:キャベツの悲しみ
「・・・その通りね。自分たちのことだけを考えてちゃいけないわよね。
お母さん、駄目ね、最近、光輔君に教えて貰ってばっかり。光輔先生の生徒にして貰おうかな?」
三人は顔を見合わせて、悦びいっぱいの笑顔になっていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
親子が仲良く助け合って生きていく姿・・・親は子供が愛おしくて仕方がない、子供は親孝行をして親の悦ぶ姿を見ることが嬉しくて仕方がない・・・そんな姿こそが天国をそのまま現しているということでしょう。
家庭の中が天国でなかったら、他人様に親切をしたり、周囲を明るい天国に出来るはずがありません。もちろん、死んでから天国に行けるはずもありませんね。魂にとっては、この世もあの世もずっと続いているんですから。
家の中が明るく笑いの絶えないような家庭、そんな家庭こそがこの人生で一番大切なことで、実現すべき姿なのでしょうね。