眼底出血、網膜中心静脈分岐閉塞症の治療経緯について・・・その2/2 -転院後の治療とその効果

転院した大学病院での初診

 前稿、『眼底出血、網膜中心静脈分岐閉塞症の治療経緯について・・・その1/2』の続きになりますが、眼底出血を起こした私は、総合病院で見て貰いたいという思いから、町医者(開業医)に紹介状を書いていただくようにお願いをしました。そして書いていただいた紹介状は、ある大学病院の眼科でありました。

 この大学病院も最近の傾向というよりは2015年5月成立の法律により、紹介状のない初診は、\5,800円が必要ということになっています(開業医の場合は、保険適用で2,820円の3割)。

 私は、紹介状があるにもかかわらず、初診の割り込みがなかなか出来ず、土曜日は、予約のない患者を受け付けることになっているとのことで、どれだけ待つかは分からないが来て下さいと言われて、診察を受けました。

 看護婦の問診を受け、視力検査。

 視力検査後に、瞳孔を開く目薬を差され、待機。

 以前の町医者では、この目薬を大体3回ぐらい(2回目からは瞳孔の開き具合を看護婦が確かめてから目薬を)差されたが、この大学病院では一回こっきりで、瞳孔の開き具合も確かめることなく機械の前に座らされて眼底写真の撮影となりました。

 何が違うのか、目薬の種類が違うのか、病院の習慣が違うのか、結果としては何の問題もなく眼底写真が撮影されておりました。

 ただこの大学病院では、機械が最新鋭なのか、眼底写真と黄斑部の写真とが同じ機械で同時に撮影されていました。しかも、以前の眼底写真では上を見ろ、下を見ろと色々指示されていましたが、今回はいつ撮影したのかが分からない時点で撮影されていたようです。




RS-3000(光干渉断層計)


 これは、RS-3000という最新機械が導入されているようで、黄斑部の断層写真と同時に、眼底の静脈撮影(前の町医者の場合は、造影剤を注射して撮影していたもの)も可能な装置のようで、この大学病院ではこの機械だけで写真撮影の全てがまかなわれているようでした。

 やはり大学病院は資金が潤沢なのか、最新機械を導入しているのだなあと思わせていただきました。

 その写真撮影後に診察の面談をするわけですが、この大学病院の初診での病状説明が、びっくりの内容でした。

 町医者では、眼底出血としか聞かされていなかったものですから、同じ名前を言われるのだろうと思っていましたら、下記のようなA4の専用のメモを用意して、書き込みをしながらの説明をしてくれました。


 そして、ここで初めて、『網膜中心静脈分岐閉塞症』という病名を聞かされ、黄斑浮腫が生じているので、視力が低下していると言われました。

 前任の医師の対応(眼病に対する説明がほとんどなかった)と余りにも異なるので、その対応にびっくりしてしまい、医師の説明が良く耳に入らないような状況でしたが、黄斑浮腫に対する治療としては、前任の医者の奨めた手術ということではなく、注射を奨めてくれました。

 これは後からの私の推測ですが、私がかかった町医者では注射技術を習得しておらず、旧来の手術による、黄斑部の異物除去という方法しか選択肢が無かったのではなかろうかと思わせていただきました。

 前稿でも書かせていただきましたが、この手術は、イメージ的にもたいそうなもので、黄斑浮腫の対応に関しては、下述の抗VEGF薬注射の技術を習得している医師(町医者・開業医でも習得している病院はあります)を選んだ方が良いだろうと思いました。

 話は変わりますが、私の友人で、ほぼ同じ眼病即ち、眼底出血から網膜中心静脈閉塞症になり、硝子体内注射の手術を受けた人がいますが、その人は今まで通っていた病院から、『この病院では、硝子体注射は技術的に出来ないので、紹介状を書くので、○○病院で手術をして貰って下さい』と言われたそうであります。

 自分の病院内の技術だけでクローズしないで、習得していない技術に関しては、他の病院と連携を取るという姿勢が、医者の基本であって欲しいとも思いました。

眼底出血の原因究明について

 この大学病院の先生に、「出血原因を突き止めることは出来ませんか?」と、ダイレクトに聞きました。

 返ってきた答えは、「不可能です」とのこと。

 今回の場合は、眼底出血が起こって、その結果、黄斑浮腫が起こりました。眼底出血の起こりやすい人の傾向としては、糖尿病や高血圧、更には動脈硬化などが言われていますが、私の場合はこのどれもが当てはまりませんでした。

 ただ、例えどれかが当てはまったとしても、それが直接の原因か否かは、突き止めようがなく、大きな意味では、眼底出血に対しては、対症療法しかないようであります。

 当然、例えば糖尿病の可能性が高いだとか、高血圧が原因として考えられるという因子を持っているのであれば、その原因らしき病気を治療することが、眼底出血の治療にも寄与するであろうことは言えると思いますが、逆に考えると、それを治療したところで、眼底出血が治まるかどうかはよく分からないということにもなっていくのでしょう。

抗VEGF薬(アイリーア)の注射とは

黄斑浮腫とは

 体の中には、新生血管の成長を活性化させるVEGF(VascularEndothelial Growth Factor、血管内皮増殖因子)という物質があります。

 このVEGFという物質は、眼底で静脈の閉塞(網膜閉塞症)が起きたときに、肉体が異常を検知して自衛的に造り出すもので、新生血管を造るように促したり、静脈から網膜へ血液の水分を出そうとする強い働きをもつ物質です。

 このVEGFの強い働きが原因となって、黄斑部近辺で新たに作られた毛細血管が破れたり、血液が溜まったり、血液中の水分が分泌されたりして、黄斑浮腫が発生してしまいます。

抗VEGF薬とは

 抗VEGF薬とは、その名の通り、VEGFの働き、即ち、静脈中の血液や水分を網膜上に出そうとする働きを弱める薬ということで、肉体の自衛的な作用が返って悪影響を及ぼしてしまうために、その自衛作用が行われないようにする薬ということになります。

 現在、三種類の薬が開発、認可されており、アイリーア、ルセンティスおよびマクジェンという名前で呼ばれていますが、非常に高価な薬で、どの薬も一回の注射の薬代だけで10万円を超える価格となっています。

抗VEGF薬の注射

 私は転院を希望したときから、この医師の治療方針に従ってみようと、心に決めておりました。

 医師は、「非常に高価な薬なので、決めるのは患者さんですが・・・」と言いながら、抗VEGF薬の、硝子体内の注射を奨めてくれました。この大学病院では、アイリーアという薬を使っているようです。

 三種の薬は当然、開発会社も異なりますので、効能等も微妙に差異がありますが、その病院が常用している薬に頼るしか手がないということになるのでしょう。

 私がOKすると、では一週間後に、実施しましょうということになりました。

抗VEGF薬:アイリーアの硝子体内注射の実態

 この大学病院では、注射までに事前に何かするように言われたことは一切ありませんでしたが、医師によっては硝子体内の注射の説明には、「三日前から抗菌薬目薬を点眼する」と説明されているところもあります。

 経験が異なるのか、そういう習慣を続けているからなのかは分かりませんが、当日は全く普通の状態で病院に向かいました。

 注射なので、医師も看護婦も、手術というような名称は一切使っていませんでしたが、注射当日、やはり手術室のようなところに通され、ベッドに寝かされました。

 注射(手術)手順は下記の通りです。
①血圧を測ります
②散瞳薬の点眼
③目とその周辺皮膚の消毒・・・ヨウ素系の消毒薬らしく、目がかなり痛み、目が開けていられない感覚になります

④局所麻酔の点眼、抗菌薬の点眼・・・これにより、消毒の痛みは一瞬にして無くなります。⑤開瞼器という器具を使用して、瞼を閉じないように、強制的に開けておく処置をする


⑥目の白目部分に抗VEGF薬(アイリーア)を注射する・・・下を見て下さいというようなことを言われ、注射をされます。液体らしきものがユラユラと目の中を落ちていくように見えました。注射針が入る感覚はありますが、痛みらしきものは感じられませんでした

⑦注射後、再度抗菌薬を点眼
⑧注射をした側の目に眼帯をつけてくれる
⑨看護婦が指を差しだし、何本見えているかを言うように促します

⑩血圧測定をして、注射行為は完了となります・・・⑨⑩は、かなりのストレスというか、何をされるのかという思いから、気が動転したり、血圧が異常に上昇する方がおられるようです。私は基本的には何の問題もないと思っていましたが、血圧120が140に上がっていたと言われました。

 私の場合は、注射をされた部分辺りに目の中のゴロゴロ感があったので、その旨を伝えると、時間が経てば無くなっていくと思いますが、長く続いたり、何か異常があったら連絡をして下さいと言われました。が、幸い、その後は何の違和感も感じられませんでした。

 当日は眼帯をしたまま電車に乗り、家に帰りましたが、完全な片目での歩行ということもあってか、やはり結構なストレスを感じていたようで、自分では平静なつもりでありましたが、家に帰るとどっと疲れが出てきたように感じました。この様な硝子体注射の場合は、誰かに運転を頼んで送り迎えをして貰った方が無難な気がします。

 注射後は、一日だけ風呂に入らないように言われましたが、眼帯は数時間後に外して良いと言われ、家に帰って落ち着くと、普段通りの生活に戻れました。

 この硝子体注射の費用は、14,913ポイントとなっていましたので、無保険で149,130円、保険が適用されたとしましても、3割負担(約4万5千円)が、3ヶ月も4ヶ月も続くというわけで、経済的にもきついことになってしまいますので、フトコロと相談しながら決断しないといけないかも知れませんね。

硝子体内注射後の診察

硝子体注射一週間後の診察

 抗VEGF薬注射は、月一回の注射を数回続けることにより、黄斑浮腫が平常に戻り、視力が回復すると言われております。

 しかし私の場合、一回の注射で、何と黄斑部の浮腫が平常に戻っていました。

 ところが残念なことに、視力は回復せず、矯正して0.5~0.6程度の視力、即ち浮腫があった頃と、視力に関しては何一つ変化がありませんでした。

 医師は、「浮腫は退いたが、黄斑部に、二つの小さなゴミ様の物が残っているように見える。これが視力回復に影響しているのではないか? その残存不純物が自然治癒力でどこまで無くなるか、一ヶ月間、様子を見てみましょう」ということでありました。

一ヶ月後の診察

 注射一週間後の診察から更に一ヶ月後の診察を受けましたが、極端に言えば、何の変化も見られませんでした。

 黄斑部の浮腫は退いている。しかし、視力は変わらず回復しない。

 医師は、為す術もなく、更に一ヶ月、様子を見ましょうか、と言うだけでありました。

写真は2017-2月末時点の浮腫が退いているものです。

更に一ヶ月後(計約2ヶ月後)の診察

 黄斑部の眼底写真を見てびっくりしました。黄斑部が以前のように腫れ上がっていました。

 医師は、「いや、この様に戻ることもあると思っていました。注射の薬の効果が無くなったんですね」と言われました。注射薬(アイリーア)の効果は、約一ヶ月くらいしか持続しないので、効果が切れて、尚かつ静脈からの分泌物があれば、浮腫は再発することになるようです。

 「しかし、視力に変化はありませんので、このままで様子を見るしかありませんね」と言われ、更に一ヶ月後の検診ということになりました。。

 写真は、最新の2017-6月時点のものですが、3月以降同じ状態を呈しています。

その後の経過

 硝子体注射を受けたのが一月下旬。
 注射後の一週間診察:一月末・・・黄斑部の浮腫が無くなるが、視力は回復せず。
 注射後の一ヶ月診察:二月末・・・先月と同じで変化なし。
 注射二ヶ月後の診察:三月末・・・黄斑部の浮腫が再現するも、視力は悪化せずそのまま。
 その後の診察:四月末~六月末・・・毎月末に検診を受けたが、黄斑部の浮腫はそのまま継続するも、視力もそのままで移行。

 医師の診断は、「視力が更に悪化すれば硝子体注射をする意味もあるかも知れないが、黄斑部の浮腫が起こった状態であっても、さらなる視力低下がないので、基本的には、このままで様子を見るしかないでしょう」との診断であった。

 私が、「先生は、浮腫は自然治癒力によって縮小していくと仰ってましたよね? それが縮小しないということは、静脈から水分が漏れ続けているということなんでしょうか?」と質問をしました。

 「そういうことだと思います。幸い、眼底写真を見る限り、出血は治まっているようですので、出血による黄斑浮腫ではなく、静脈から漏れ出す血液中の水分が浮腫を起こしているのだと思います。
 普通は、時間が経てば浮腫の原因の水分の漏れも治まってくるものですので、時間をかけて身体の自然治癒力に期待しましょう」
 ということでありました。

 この先、身体の治癒力によって黄斑浮腫もなくなり視力も回復するのか、黄斑浮腫はなくなっても視力回復はないのか、黄斑浮腫も無くならないのか、更なる悪化が見られるのか・・・時間の経過を待たなければなるまいということであります。

 私は最初の注射の時は、数回の注射を覚悟しました。その注射によって、視力が改善する可能性があると信じたからです。

 しかし、変な意味で期待は裏切られ、浮腫は1回の注射で治まりましたが、視力は回復せず、2ヶ月後には、浮腫までが復活してしまいました。

 この時点で、たとえ視力が悪くなっていっても、二度目の注射はしたくないなと思っていました。二度目の注射をして浮腫が改善しても視力は回復しないのではないか、そしてその浮腫もまた、その内に再現してくるのではないかという思いがあったからです。

 今、このように思っていたとしても、現実に視力が悪化し、医師の強い勧めがあったとしたら、もう一度くらいは注射に踏み切るかも知れませんが、この注射のストレスは、個人差はあると思いますが私にとって、かなり大きなものでありましたので、余程の期待が持てないと再チャレンジはしにくいな、という感じであります。

 さて、この大学病院の先生はサラリーマンでありますので、6月末で別の病院に転勤ということになり、この先生に見ていただくのは6月が最後ということになりました。

 そういうことで、この医師の転勤をもちまして、私のこの目の治療に関するブログも、完結をしたいと思います。

 同じような境遇の方の参考になれば幸いです。

最後に

 今までは単なる肉体的な経緯を書いてきました。

 このブログの趣旨は、心です。ピッカピカの心を目指すものです。

 高橋信次先生は、病気は自分の心の思いと行いが原因であるとお教え下さっています。目の曇りは、まさしく心の曇りです。

 私も沢山たくさんの心の曇りを抱えています。本来、正しい道を歩もうと志す者は、自身の心の曇りを自ら払い除けていかなければならないのでしょうが、なかなか自分に厳しく接することができないもののようであります。

 しかし、この眼病により、何故この様な眼病を自分が引き寄せたのかと、自分の心、思い・行いの反省をさせていただきました。そして数ヶ月の間に、いくつかの心の曇りを解消させていただいたのではないかと思っております。

 この眼病という厳しい環境にいなかったなら、とても手がつけられなかった心癖にも着手させていただき、今。必死になってその改善に取り組ませていただいております。

 眼病に罹って約七ヶ月、心苦しい時期もありましたが、そして今も視力は従前には回復しない状態であります。極端に言えばこの眼病、七ヶ月前と何も変わっていないかも知れません。

 しかし、心は大分、変わりました。

 これで終わりという終点など見えるはずもありませんが、心磨きの道の景観は、大きく変わったように思わせていただいております。

 それは、自分の心の中の癖と言いますか、悪癖と言いますか、曇りと言いますか、そのようなものが幾らかでも無くなっていったからではなかろうかと思わせていただいております。

 どんな精進が出来たのか? どんなふうに変われたのか? 何が変わったのか? 機会が有れば又、このブログに書かせていただくかも知れません。

 そういう意味合いからしますと、この眼病があったればこそ、心を磨くことに邁進できたということになります。

 心磨きはこれからも続いていきますし、悪癖を修正する作業は今も継続中であります。

 もし今、この眼病が治ってしまったら、今継続中の悪癖の克服作業も、中断してしまうかも知れません。いえ、間違いなく中断して、安楽な道に逆戻りしてしまうことでしょう。今までの自分の弱い心の有りようを見ている限り。

 そういう観点から見てみますと、この眼病は、私の心磨き、ピッカピカの心になるためには必須の、なくてはならないモノということになってしまいます。

 全てに感謝、悪しき出来事、苦しき出来事にも感謝ということは、こういうことなんであろうと思わせていただきました。

 ご指導をいただきました、眼に映らない、耳に聞こえない世界の皆様に、感謝申し上げます。

 有り難うございます。







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コメント

  1. たか より:

    同症状でした。
    私は動脈硬化の診断、網膜光凝固術を2回、アイリーナを1回して次の注射待ちです。視力は1.2から0.8まで落ちました。次の診察結果が怖いです。