ずっと何もしなかった妻の誕生日
子供が小さいときは、家族それぞれの誕生日を、ハッピバースデーなんかを歌いながら祝っていましたが、子供が大きくなってからはそういう行事は、いつの間にか遠い記憶の外に追いやられてしまいました。
今年の妻の誕生日が明日に迫った日に、ふと、こんなことを思いました。
「明日は私の休みの日だし、誕生日に夕食の準備をさせるのも何だから、二人で外食でもしようかな」と。
夕食を終えてゆったりしているときに、「明日の夕食は、鳥貴族にでも食べに行こうか?」と提案しました。
「明日は出掛ける用事もないので、良いですよ」と、妻は恐らく自分の誕生日だから声をかけてくれたなどとは全く思わないような感じで答えました。
「鳥貴族」というチェーン店は、最近よく使わせて貰っており、全品280円の均一料金で、たらふく食べて飲んでも、散財したという気がしない、誠にもって有り難い居酒屋と思っております。我が家の隣駅徒歩一分にあり、大変気に入っております。
この提案をしたときは、単に上記のような程度のことを考えていましたので、妻に二人分の夕方6時の予約を頼んでおりました。
近くに住んでいる娘夫婦と二人の孫
誕生日当日は私の休みの日で、朝から家でパソコンに向かっておりました。その内ふと、娘夫婦と孫二人をこの夕食に呼んであげると、妻も悦ぶのではないかという考えが思い浮かびました。
早速メールでそのことを娘に伝えると、「子供の水泳の練習があるので、6時半頃になってしまうので、会食予定の6時は無理」と返事が来ました。
「無理」が主体なのか、「6時半なら行ける」が主体なのか、理解に苦しみましたが、何度かのやりとりをして、私たち夫婦は6時から食事を始め、娘家族(夫婦と孫二人)は6時半頃から合流するということになりました。
蛇足かも知れませんが、もし行きたいというときは、「6時半なら行けるんだけど・・・」と意思表示をしてくれると、判断が早いですね。
そして、娘には、「鳥貴族で偶然出会ったような感じで合流しよう」ということで、妻には内緒ということにしました。
先に食事を始めた私たち夫婦
先に6時に鳥貴族に到着した私は、妻に、6人で予約していることを悟られてはならないと、早足で店に入り、店員に4人は遅れてくることを告げましたが、その店員は、私の言っていることがよく理解が出来ないようで、動きが止まってしまいました。
私の後ろにはもう妻が来ており、会話の内容が全て聞こえるような状況になっておりました。
私はとっさに、店の入り口に掲げてある予約表の黒板を指さし、「これ、これ!」と言いました。
幸いというと語弊がありますが、妻は視力が余り宜しくなく、黒板の文字、「6人予約で、6時二人、6時半4人」と書かれている文字は読み取ることが出来ないはずで、店員はそれを見てやっと理解してくれ、我々二人を席に案内してくれました。
案内された席は当然ながら6人席のテーブルで、おしぼりやメニューが6人分準備されていました。
私は4人分をさっと片付けて、6人掛けのテーブルに二人で食事をするのだという感じに変更しました。
妻は別段疑問を感じる風もなく、メニューを見て、店員に注文する準備を始めました。
段々と客が増えてきて、6時半を過ぎました
程なく、二人っきりの夕食が始まりました。
時間が経つと共に、段々と客足が増えてきました。
私たちの座った6人テーブルの横側は、二人席のテーブルが並んでおり、ドンドンと二人客が来て埋まっていきます。
私たちが座っているすぐ横の二人席が埋まったとき妻は、「私たちがあそこに行ったらよかったのに、ね?」と言いました。
私は、「ここは満席時は2時間交代制だから、この広いテーブル席は、8時か8時半頃の予約が入っているんじゃないか? だから6時に来た我々が座って、ちょうど都合が良いんじゃないかな?」とあたかも店側が考えているような回答をしておきました。
そして暫くして、6時半を過ぎて、孫一家がやってきました。
真っ先に孫二人がやってきて、「お祖母ちゃん、誕生日、おめでとう」と言ってしまいました。
幼い孫に、偶然出会ったという演技は難しかったのでしょう、最初は驚いていた妻も事情が飲み込めてきたのか、「エッ、どうしたの? 何? サプライズなの?」と満面の笑顔で答えていました。
6人の会食を終えて
娘夫婦は近くの時間貸し駐車場に車を停めています。
私たちは電車で来ておりますが、孫が私たち夫婦を駅や家まで送っていくとは言わずに、自分たちを「駐車場まで送って」と言います。
「私たちを家まで送ってくれるんじゃなくて、駐車場でサヨナラなんか?」と冗談を言いながら駐車場に着くと、孫二人が花束を持って、「お祖母ちゃん、おめでとう」と、妻に渡していました。
妻はこれも又、嬉しかったようです。
電車で一駅の隣駅ですが、車で送ってもらいました。
家に着いてからは普段と全く同じペースの時間が過ぎていきます。
そしていつものように私の先に寝る時間が来て、妻におやすみの挨拶をすると、「おやすみなさい」の返事と共に、「今日は有り難うございました」というお礼の言葉が返ってきました。
こんな形で感謝の言葉が返ってきたのは初めてではないかと、若干、驚きを禁じ得ませんでした。
そしてそれと共に、今まで妻が悦ぶであろうと思うことは、それなりに色々やってきたつもりではありましたが、心に響く悦びではなかったのかな、と。
サプライズということではなく、ほんの少しの付加価値をつけた思いやり、悦びそうなことをもっともっと考えていくことが、夫婦といえども大切なことであり、そしてそれが自分の悦びにも繋がっていくのだなと、人生の晩年に近づいてからの、誠にもって遅ればせながらも、そう思わせていただきました。
備考:
年内(妻の誕生月)に投稿するつもりでしたが、年末から風邪を引いてしまい、パソコンに向かう気力が失せてしまい、新年早々の投稿となってしまいました。
ご容赦下さい。